vol.4 とりもと硝子店さん

 

vol.4 とりもと硝子店さん

たくさんの「こと」や「もの」があふれる今、作り手の想いと使い 手の心がつながる奇跡。
瀬戸内の小さな町で暮らし、ここにある風 景、文化、素材と向き合い、ものづくりにこだわりと情熱を注ぐ作り手の方々をご紹介します。 彼らの美意識やものづくりの喜び、遊び心などが詰まった言葉を大切に集めてそれぞれのストーリーを発信していきます。




第4回は、硝子作家とりもと硝子店さん。鳥本雄介さんとの出会いは20年ほど前のこと。cafe umieができて数年たったある日、「僕の作品を使ってください。」とやってきた青年。持ってきたスニーカーの箱の中には、硝子の箸置きやグラスたち。そこから展示会を開催したり、ご家族で遊びにきていただいたりと長いお付き合いが続いています。

今回は、とりもと硝子店の鳥本雄介さん、由弥さんにお話しを伺いました。


          

 

―硝子と出会ったきっかけを教えてください。

雄介さん:映画を観てかっこいいなて思ったんです。
『Love Letter』という映画でした。中山美穂さんが主演されている映画で、ほんの一瞬ですけど、硝子を吹くシーンが出てくるんですよ。そのワンシーンを見てかっこいいなと思いました。


―いつから硝子の道へ進もうと思いましたか?

雄介さん:大学を出るときから探していたんですが、そのタイミングでは荒川さんの所までは辿り着かなくて・・・。
いろいろ調べていたら、給料の面などで厳しい場所が多くて、大学でデザインを勉強していたので、一度そっちでやってみようかなと思い、印刷会社に勤めました。 あんまりキツすぎて、やりたかったことが嫌になっちゃうのももったいなって思って。その後、会社を辞めて硝子での就職先を探している時に荒川さんの所に辿り着きました。




―由弥さんのきっかけは?


由弥さん:昔、テレビで吹き硝子工房のドキュメンタリーを見て、幼稚園ぐらいの時だったかな。この仕事するやろうなと漠然と思ったのが初めです。幼稚園に入る前かそのくらいの時だったから、仕事にするって思ったわけではないけど、なんとなく硝子をするなとは思いました。


―ずっと夢は続いていたのですか?

由弥さん:いや、そこからは全然そういう事を覚えていなくて。でも硝子細工とかキラキラしたものがすごく好きでした。
吹き硝子をしてみようと思ったのは大学の時かな。思い出したんですよ。
将来のこととか生計を立てていくことを考えた時に、どうせやったら好きなことをやろうと思って。その時に昔の夢を思い出しました。
そこからはパタパタと道が開ける感じでしたね。富山の学校を出て、
その後たまたま知り合いの紹介で荒川さんと出会いました。





―雄介さんは荒川さんのもとで長く勤められていますね。

雄介さん:将来自分の作品でやっていく人が、14年も同じところにいるっていうのはかなりレアですね。
なんか楽しくってあっという間に14年経っちゃいました。笑
もっといれたら、もっといてもよかったです。 たまたまタイミングがあって独立しました。
荒川さんの所では教えてもらう時間と自分の作品を作る時間のバランスがとれていて、とにかく毎日楽しかった。


ーそして「とりもと硝子店」として独立されたんですね。

雄介さん:根拠のない自信が少しと、たくさんの不安がありました。窯を作っても、硝子が溶けるかどうか分からないですしね。荒川さんと相談しながら窯を立てたから溶けないことはないんですけど、でもどっかで間違えてたら溶けないんです。
あと、窯立てるのが結構きついんですよ。レンガを積んで、熱に強いセメントを溶かしてつくるんですよ。うちの場合は4ヵ月くらいかかりました。荒川さんの所で働いている時に今の家がたまたま空いていてずっとここに住んでいて、独立する時も特にどこかへ行く必要もなかったから、このまま貸してくださいって言って借りたんです。




ー独立してから変わったことや、家族が増えてからものづくりへの変化はありましたか?

由弥さん:独立して結婚して子どもができて、っていうのがバタバタっとあったから生活がすごく変わりました。

雄介さん:変わったのは、家族ができたのが圧倒的に違いますよね。
独立して2年目くらいに結婚して、子どももできてなので、、、生活もですし性格も変わりました。





―由弥さんから見てどんな風に変わったと思いますか?


由弥さん:無意識に人に対して作っていたバリアみたいなものが無くなった気がします。もともとすごい優しくて温和な人ですけど、それを人前に出すのを躊躇しなくなった。あとよく喋るよう になった。

雄介さん:あとね、仕事の寝言を言わなくなったよね。笑
子どもの寝言を言うようになったかも。

由弥さん:昔は寝るギリギリまで仕事のことを考えていたからか、シビアな寝言を言っていたのが、家族が増えて一日に起きることが増えて、最近はよく子どもに対しての寝言を言ってます。笑
雄介さんが子どもの保育園の送り迎えを毎日してくれますし、お風呂も入れてくれますよ。

毎日、おもちゃ箱の中で暮らしているような感じですよ。土日は子どもたちが吹き場にきて、危険なことには全然手を出さないんですけど、お父さんの横で自分なりに吹き硝子の道具を針金や葉っぱやらでこさえて来てお父さんの真似をしてますよ。

でもそれが、雄介さんの動きをよく見ているからか意外と上手いんですよ。本当に硝子がついていたら、だいぶいい感じに硝子吹けているなって思います。笑

あとはすごく集中したいタイミングって時に、子どもたちが喧嘩を始めてその仲裁をしてもらったりとかね。うるさくて忙しいですよ。でもこの時間も今だけでどんどん変わっていくだろうから、こうやって楽しめばいいのかなって二人で話しています。後で振り返って笑えるようにね。本当に賑やか。





ー鳥本さんがつくる吹き硝子の特徴や魅力は?

雄介さん:プレーンなものをずっとつくり続けていることかな?いわゆるコップです。あんまり細工していないコップを作っていても、飽きないっていうのが面白いんですよね。同じ物を作ろうとしても同じものができないようなやり方にしたからですかね。
でも買う人が買いやすいとか、売る人が売りやすいようにするためにはある程度同じものの方がいいと思っています。





ーインスピレーションの源はどこからですか?

由弥さん:器とかは、ご飯を
作っていてちょっとこんなの作ってみて、って話す事はありますね。普段の生活の中で、こんなのがあったらいいなって、ふっと思ったものを試しにつくってもらって、サイズ感とか、しばらく使ってみて、調整していくことが多いかな。普段の生活の中にスタートの芽みたいなものがあって、作りながら調整して、雄介さんが最終的に仕上げる感じです。





ー由弥さんがアイデアを見つけて、雄介さんが形にすることが多いですか?


由弥さん:今は私が吹き硝子から離れて、家事をしたり子育てをする時間が雄介さんに比べてあるので、発見する時間がその中に隠れています。たまたま私がアイデアを拾い上げるタイミングにあるんだと思います。



ー由弥さんがインスタグラムで硝子の使い方やアイデアを投稿されていて、大好きでいつも拝見しています。


由弥さん:育児の中でどうしてもフラストレーションが溜まっていくんですけど、硝子をガンガン作るには子どもたちがいて集中す ることができない、、って思ったときに、毎日の生活の中でトレーニングみたいな感じで始めたの。


             


@yuyat.i.g.a216 より 

アイデアスケッチするようなつもりで、ちょっとしたアイデアを書き出したのがスタートです。それがだんだんと今みたいに感じになって溜まってきました。最近はポストカードにしたりしています。

自分が楽しくやってたら、周りにも楽しんでくれる人がたくさんいるみたいで嬉しいですね。子どもたちが最近、葉っぱとかを集めてきてプランツドローイングしてって持ってくるんですよ。それで「あれ、できたん」とか言って聞いてくるんですよ。笑
まさかそんな日が来るなんてね。選んでくる植物が私と違うから面白いですよ。



ー硝子作家としてこれから表現したいことはありますか?

雄介さん:あまりそういうふうに考えてものつくりをしていませんね。

由弥さん:うーんどうだろう、どんどん硝子作家という風には思わなくなったよね。

雄介さん:硝子、じゃなくても面白そうなことはやったらいいし。ただ、硝子が溶けている設備を手にいれたからそれは使うけど。かっこいいなって思うものを作りたいだけで・・・。

由弥さん:吹き硝子のスポーティーな感じが身体に染み付いているから続けられているのかも。自分たちのスタイルにすごく合っています。

雄介さん:あんまり肩書きは気にしてないです。肩書きよりも出来上がったものが、喜んでもらえるものが作れたら嬉しいです。





ー風鈴が生まれたきっかけを聞かせてください。

雄介さん:今、kitahama blue storiesさんで並べてもらっている風鈴は、もともとは由弥さんがつくっていた風鈴なんですよ。それをとりもと硝子店として活動するようになって、どちらがというわけじゃなく作るようになりました。

由弥さん:硝子の風鈴って硝子同士がぶつかる音のものが多いけど、うちは硝子と真鍮の部分を使っているんです。真鍮の作家が友達にいて、その人に作ってもらっています。私は硝子と金属がぶつかる音の方が綺麗だと感じていて、それがきっかけですね。

愛媛に住んでいた頃は、大洲和紙を風よけに使っていましたし、京都に住んでいるときは黒谷の和紙を使っていました。葉っぱを針金で刺して風よけとして使うような、さりげなさっていうか・・・。葉っぱは朽ちていくから、次に自分なりの風よけをつける可能性がすごく高いと思っていて。今の風よけがなくなった時に、住んでいるその土地、その季節の自然のものをつけて地域の風を起こして風を感じて欲しいという思いがあります。だからわざと長持ちするように作っていません。

 



ー風よけの植物はどんな風に選んでいますか?

由弥さん:風よけに使っている花とか羽には、幸福を呼び込むメッセージがはいってるんです。花言葉がね。
白い羽をまとめて飾っておくことは、幸運を呼び込むおまじないだったり、紫陽花のドライフラワーは玄関に飾っておくと魔除けになるとかね。ユーカリの花言葉「再生」とかいい意味があり、そういうのも含めて植物を選んでいます。一年中家に飾ってもらっていてもいいですしね。


ー今回、「なつのおと」というテーマで風鈴をお届けしていますが、音へのこだわりは?

雄介さん:心地よい音が出るように形や硝子の厚みに気を配っています。
夏休みのカルピスの氷のような清々しい音がよいですね。





ーものづくりに、大切にしていることは?

雄介さん:うそをつかない。正直に向き合うこと。


ー最後に、とりもとさんの硝子を手に取ってくれる方へメッセージをお願いします。

雄介さん:とりもと硝子店の硝子は比較的丈夫です。どんどん使ってください。楽しんでいただければとってもうれしいです。





今回は硝子を作る夫婦のもの作りへの想い、ありのままの日々の暮らしを伺うことができました。暮らすことそのものを楽しむ姿勢は、硝子の中に柔らかさや温かさを生み出しているのかもしれません。

瀬戸内の海のような穏やかな揺らぎを映し出す鳥本さんの硝子。日々の暮らしの中に自然と溶け込み、大切な人の日常にも届けたくなります。

オンラインショップにてとりもと硝子店さんの商品の取り扱いが始まりますので、ぜひご覧くださいね。



<鳥本雄介>
1975 神戸市生まれ 大阪芸術大学デザイン学科卒 印刷会社勤務 を経て
2000 晴耕社ガラス工房入社 荒川尚也氏に師事
2011 日本クラフト入選
2015 独立 とりもと硝子店を開窯

<鳥本由弥>
1978 大阪府生まれ 京都造形芸術大学美術学部彫刻コース卒
富山ガラス造形研究所卒
2005 晴耕社ガラス工房入社 荒川尚也氏に師事

 

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